福島県・相双地域に病院(しかも子供病院)を作るプランを語るとき、放射線に対する話題を避けて通ることはできません。既に何人かの意見として、質問や疑問の声を頂いています。
以下、放射線量をSv(シーベルト)単位で表記します。mSv(ミリシーベルト)の1/1000がμSv(マイクロシーベルト)です。
相双地域の南側、双葉地域には「帰還困難区域(年間50mSv超)」「 居住制限区域(年間20mSv超・50mSv以下)」「避難指示解除準備区域(年間20mSv以下)」に区分された避難指示区域があります。しかし北側の相馬地域(相馬市や南相馬市の多く)は、この避難指示区域に当たりません。
年間20mSv以下は避難指示区域ではないものの、平時に目指すべき(特に子供の)居住地の放射線量は、より大きな安全域を確保して「年間1mSv以下」と考えられ、これは0.23μSv/時に相当します(環境省)。日本の自然放射線量(宇宙線や土壌中のカリウム40等)が0.04μSv/時程度あり、原発事故由来の放射線量は0.19μSv/時以下になっている方が望ましいということになります。実は日本の自然放射線量・年間0.17mSv(0.04μSv/時)は世界的にみるとかなり低く、世界平均の自然放射線量は年間2.4mSvです(年間1mSv超)。なお、高度が上がれば宇宙線の量が増えるため、航空機(国際線)の乗務員は被曝線量が増えます。文科省から年間5mSv以下にするよう指針が出ていて、およそ年間飛行時間1000時間に相当します。
それでは、現在の放射線量はどうか?
東京都環境局は足立区・葛飾区・江戸川区の都有地(3公園6地点)の放射線量を3ヶ月毎に測定していましたが、すべての地点でおおよそ0.2μSv/時間を達成したため(放射能の自然減衰)、2013年11月をもって調査を終了しました。
福島県ではいたるところにモニタリングポストがあり、そのデータはいつでも誰でも見られるようNHKのウェブサイト等ネット上で公開されています。
2013.9.22現在の放射線量
広野町 0.113μSv/時 原発から23km
南相馬市 0.115μSv/時 原発から24km
いわき市 0.133μSv/時 原発から43km
郡山市 0.134μSv/時 原発から58km
福島市 0.241μSv/時 原発から61km
会津若松市 0.064μSv/時 原発から97km
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葛尾村 3.096μSv/時 原発から23km
マップに示すように、原発の北西方向に線量の高い地域があります。線量の高低は原発からの距離と相関しません。
先入観を捨てて、線量を見てください。「相双ふくしま子供病院」の建設地は、双葉地域ではなく、相馬地域を想定しています。首都圏と放射線量の差はほとんどありません。
それでも「不安」だから避難するという考えを否定するわけではありませんが、データは上述のとおりです。
ちなみに医療用放射線は、診断・治療目的で使われるため環境放射線の基準を超えても良いとされていますが、参考に被曝線量を示します。胸部X線検査1回で0.3mSv、胸部X線CT1回で6.9mSv、医者・放射線技師などの被曝限度・年間20mSv、がんの放射線治療60,000mSv。
冷静に数字を見れば、相双地域(北側の相馬地域)の放射線量は全く
問題ありませんが、これは原発事故処理が順調に進むことが前提です。万が一、再度爆発が起こるようなときは直ちに避難が必要になる可能性もあります。だからこそ、福島県内では今もリアルタイムの放射線量測定が続けられています。