私は現時点で福島県の「中通り」で周産期医療に携わっていますが、先日、関東から相双地域への里帰り分娩希望の方が来ました。出産前後に上の子を見てくれる人がなく、実家への里帰りを希望されたのです。
ところが、彼女は早産になる可能性があったので、相双地域には里帰りできる施設がありませんでした。結果的に、夫は関東に残り、子供は相双の実家に預け、自分は山道を2時間近くかけて通う距離の周産期センターに入院することになりました。
もちろん、全ての患者を全ての地域で診ることには限界があるし、非効率的でもあります。遠く離れた街で出産しなければならない状況は、福島県に限らず、全国の「地方」で広がりつつあります。
しかし、周産期センターまでの距離を考えても、やはり相双地域で少なくとも妊娠34週以後の新生児を診られる体制を復活させておくのは重要です(震災後、NICUは閉鎖中)。周産期・新生児医療の充実によって「早産でない正期産児」の急変にも対応できるようになり、震災前から県内他地域より高かった乳児死亡率などを改善させることができます。
「本当は相双に周産期センターがあれば良かったけど」と言っていた彼女が無事に出産して、本当の意味で里帰りできたのは本当に嬉しく思っています。(河村真)